2010年代、私たちは、社会を変えたいと願うイノベーターたちとともに、行政と民間をつなぎ、新たな社会のかたちを提示するところから活動をはじめました。今起きている問題をひもとき、声を集め、政治や行政に届ける。意思決定の輪の外側にいたからこそ、私たちにできたことでした。当時の運動は、政策の内容を直接書き換えたというよりも、政策が議論される場の入口を押し広げることに焦点を当てたものでした。
あれから10年以上が経ち、状況は変わりました。声をあげてきた私たち自身が、企業で、行政で、政治で、あるいは自ら立ち上げた事業のなかで、意思決定に関わる立場になりつつあります。かつて誰かに突きつけていた課題を、自らの手で解いていく。主張する立場から実行する立場へ——私たちは「責任世代」になったのです。
同時に、社会に発信するという営みそのものも変わりました。いまは、個人が自分の名前で語り、固有の解釈を届ける時代です。優れた語り手やメディアが次々に生まれ、いま何が起きているのかを鮮やかに解き明かしてくれます。
しかし、その多くは、あえて特定の立場を示さないことを選んでいます。届く範囲を広げようとすればするほど、意見を明確にすることは不利になる。それは個々の語り手にとっては合理的な選択です。けれども、一人ひとりのその選択が積み重なったとき、「何が起きているか」を語る人はいても、「何を為すべきか」を引き受ける人が、言論の場から消えてしまう。個別の合理性が、全体としての空白を生んでいます。
さらに言えば、中立に見える語りも、実のところ中立ではありません。何を取り上げ、何を取り上げないか。その背景にはつねに思想と価値観に基づく判断があります。その判断を隠さず示すことは、信頼を失う行為ではなく、むしろ読み手が検証し、反論できるようにするための、最も誠実な方法だと私たちは考えています。
だからこそ私たちは、「何が起きているか」を解き明かすだけにとどまらず、「何を為すべきか」を引き受ける組織でありたいと考えています。事実とデータ、そして人文・社会科学の知にもとづいて、社会の思想や価値観の基盤となる知見を届ける。そして、言葉にするだけでなく、それが制度や仕組みとして実際に形になる過程に関わり続ける。いまこの社会には、優れた語り手——シンクタンク機能を備えたメディア——が数多く存在しています。私たちが目指すのはその逆、発信力を備えたシンクタンク、「ThinkTank with Media」です。
制度や仕組みは、一度つくれば完成するものではありません。戦後日本を支えてきた選挙や行政、メディア、経済のかたちも、当時の社会にうまく合っていた、ひとつのやり方にすぎません。時代が変われば、そのやり方も綻びます。大切なのは、綻びを見つけたときに、それを直せる力を社会が持ち続けられるかどうかです。PMI ThinkTankは、その更新の構想をDemocracy 2.0と呼び、継続的な調査と論考を通じて具体化していきます。
声をあげてきた世代として、そして実装の責任を引き受ける世代として。各業界で社会をアップデートしようと奮闘するイノベーターのみなさんと、ともに未来を構想し、そして実際につくっていけることを楽しみにしています。